県立桜中学校

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県立桜中学校

昨年、名護市の県立名護高校の附属中学、県立桜中学が来年度より開校することが決定しました。これで北部にも公立の中高一貫校ができることになります。
公立の中高一貫校に関わる様々な問題はあるものの、子どもたちの選択肢が増えることはよいことだ、とyamaは思います。
大宜味からも、桜中学への進学を考えている子どもたちが出始めているようです。
yamaも桜中学進学を考えている親御さんたちから、桜中学進学について尋ねられたことがあります。

公立中高一貫校の適性検査

中学は義務教育ですので、公立中学校では入学試験(学力試験)を行うことができません。そこで、入学試験の代わりに適性検査を行っています。一応、学力試験ではないことになっているので、多くの私立中学校が行っている一般的な入学試験とは、目的も出題内容も違うことになっています。
(近頃の沖縄県立中高一貫校の適性検査には、私立中学の問題と似た問題も出題されてはいる様ですが、、、)
その違いについて、一般的な私立中学校の入学試験と、一般的な公立中高一貫校の適性検査を比較しながら、ざっくりと説明してみたいと思います。

一般的な私立中学の入学試験の主な目的は、その学校を志望する受験生の学力調査です。学力が高いものから順に合格することになっています。たった1回のペーパーテストだけで、その受験生の学力がどこまでわかるのか、と言う疑問はあるものの、各中学校は独自に様々な工夫を凝らした問題を出題しています。

一方、公立中高一貫校では、あからさまな入学試験(学力調査)をすることはできないことは、既に述べたとおりです。そこで、学力ではない能力、適性を見て、学力を含むその子の能力を総合的に判断しようとするのです。

非認知能力

ここで言う能力や適性とは、いわゆる読解力、表現力、応用力、思考力、判断力、注意力、想像力、創造力、意欲などの力です。それぞれ、学力に密接に関係していますが、学力そのものではりません。これらはまとめて非認知能力と呼ばれます。能力と言えば能力なのでしょうが、子どもたちの性格や特質に大きく関わっている特性とも考えることができます。

このような能力や特性を確かめるためには、様々な工夫を凝らした問題が出題されます。選択肢から選んで答える問題などはほとんどありません。問題文が長いだけでなく記述式の回答を求められることがほとんどです。考えて答えを導き出すまでに時間がかかるだけでなく、その答えをわかりやすく具体的に説明できなければなりません。また、正解例がいくつもあったり、考えようによっては正解がない問題までも出題されることもあります。それは、公立の中高一貫校の適性検査の目的は、「正解を知っているかどうか」ではなく「どの様にして正解に辿り着こうとしたか」を知ることだからです。言いかえれば、「教えられたたことや習った問題をどれだけ身につけているか」よりも「まだ見たこともないような問題を自分の力でどこまで考えられるか」が重要視されているのです。
(ただ、文科省が非認知能力の重要性を認識したのはまだ最近のことですから、まだまだ適性検査としてふさわしい問題だけが出題されているとは言いがたい状況ですが、、、)
非認知能力については、「教育にはお金がかかる」のページで説明していますので興味がおありでしたらご覧ください。

準備は早いうちに

桜中学への進学をお考えなら、非認知能力を高めておくことが重要です。ところが厄介なことに、この非認知能力は塾や習い事などではほとんど育たないこと、乳幼児の頃の生活習慣や屋外体験が強く関係していることがわかっているのです。その意味では、お子さんの桜中学への進学をお考えなら、それこそ赤ん坊の頃からの準備が必要なのです。
ここで考えてもらいたいことがあります。そんな小さい子どもが桜中学のことを知っているはずもありませんし、桜中学に進学したいなどと言うはずもありません。子どもたちが自分たちから桜中学を意識したり進学を希望したりするのは早くても小学校3~4年生頃でしょう。つまり、子どもたちが「桜中学に行きたい」などと言い出してから準備を始めたのでは遅いのです。子どもたちに幸せになってほしいとお考えなら、そのずっとずっと前から準備をしておくべきなのです。子どもたちが夢を語り始めたときに必要なものをすぐに出してやれるように、まるでTVドラマ「HERO」のバーのマスターが「あるよ」と言うように、さりげなく「準備してたよ」と言えるように準備しておいてやりたいものです。いつか子どもが「○○したい」と言い出したときのことを考えて、できる限りの準備をしておいてやりたいものです。

ただ、ここで言う準備とは、幼い頃から習い事をさせたり塾に通わせたりすることではありません。近頃では、非認知能力が充分に育っていないうちに習い事をさせることの悪影響が取りざたされています。さらに、子どもたちの非認知能力は、子どもたちが幼い頃の生活習慣や家庭環境に大きく影響されることもわかっています。非認知能力を育ててやるためには、常日頃から子どもたちが持つ様々な能力や特性のことを考えながら、子どもと接してやるしかありません。親御さん、特に母親(役)の言動、表情、仕草など、細かなことが子どもたちの能力や特性を伸ばしたり阻害したりしていると言う意識を持って欲しいと思います。
これは桜中学への進学に限った話しではありません。幼い頃、非認知能力を充分に育てた人は、成人してからも自分の夢を実現したり、幸福を手に入れたりしやすくなることが、最近の調査や研究からも明らかになりつつあります。

 

今から始める桜中対策

話しを桜中学校に戻します。先に述べたように、桜中学校進学を目指すなら赤ん坊の頃から始めるのがベストです。しかし、今から始められる対策もないわけではありません。

①読解力対策

公立中高一貫校が求める様々適性のうち、もっとも基礎となるのは読解力です。読解力が不足していると、問題文さえ読みとれず、何を聞かれているのか、何を答えればよいのかわからないことすらあり得ます。

低学年の場合
まだ時間に余裕がありますから、読書習慣からじっくりと育てましょう。読書習慣は本を与えて「読め」と言っただけでは身にはつきません。最初は親、特に母親(役)が読書する姿を見せることから始めてください。子どもの手が届くところに子供が好きそうな絵本やマンガ、図鑑などを置いておけば、そのうちに子どもから読み始めるでしょう。

中学年の場合
そろそろ、こちらから積極的に働きかけなければ、自分から進んで読書を始める機会が減ってしまう頃です。こんな時は、本を読ませることは一旦、諦めて好きな映画やアニメを見せてやってください。実は、映画やアニメを楽しむためにも読解力や想像力が必要なのです。しかし、ただ見せているだけでは読解力は育ちません。読解力や想像力が足りない子どもの場合、ただ眺めているだけのこともあるのです。映画を見ながら、時には感想や印象を伝えてみてください。「この人、可哀相ねぇ」とか「ヤバイ、速く逃げたらいいのに」などと、多少、芝居じみていてもかまいませんから、大げさに表現頃なら、わざと反対意見をぶつけてみて、自分の意見をしっかりと説明できる習慣もつけておきたいところです。

高学年の場合
文学的文章(物語や小説)だけでなく、説明的文章の読解も身につけさせておきたいところです。朝食時は夕食時に毎日、TVのニュースを流して見てください。全てのニュースを説明してやる必要はありませんが、できればいくつかのニュースについて、またはニュースに使われた用語や語句について解説してやってみてください。説明文の読み取りには語彙力が大きく関わります。
さらに、新聞の投稿ページ(オピニオンのコーナー)を活用することもできます。小学生夜中学生の投稿を読んで批評させたり添削させたりすると、読解力だけでなく表現力や思考力を育てることもできます。

 

②想像力・思考力対策

想像力や思考力は、応用力の基礎です。応用力が不足している子どもたちの多くは、想像力や思考力も不足しているようです。幼い頃からオセロや将棋などのゲーム、ナンプレなどのパズルにもしたしませておきたいところです。

低学年の場合
幼い子どもにとっては、目に見えるものほとんど全てが新しいものばかりです。自分から興味を持って「これは何?」、「なんで~なの?」などの質問をしてきたら、面倒くさがらずに必ず答えてやってください。この時、「そんなこと知らなくてもいい」とか「大きくなったら習うよ」などの言い逃れは厳禁です。子どもの好奇心を削ってしまいます。その場でわからなかったら、「○○に聞いてみよう」とか「調べてみるよ」などとその場を取り繕うのはOKです。ただし、必ず誰かに聞いたり、調べたりしたことを伝えてあげてください。

中学年の場合
送り迎えの車の中でも創造力や思考力は育てることができます。例えば、前を走っている車に乗っている人はどんな人か、どこへ行くのか、などを想像させてみます。その上で、そう考えた理由と一緒に説明させます。最初はただの空想物語でもかまいません。ただ、できれば大人が「あの車は前の車に近づいてるね。きっと焦ってるんだろうな。朝だから会社に遅刻しそうなのかな。」などと推理する様子を見せてあげてみてください。これはいろいろなことに応用できます。始めて見た映画を途中で止めて、その後の進行を想像してみる、なども有効だと思います。

高学年の場合
実はナゾナゾやクイズがお勧めです。一番のお勧めは多湖輝先生の「頭の体操」シリーズです。「頭の体操」シリーズは古い本ですが、様々な方法、切り口で思考力を育ててくれます。実際の入試などに使われた問題なども収録されています。最初から全ての問題を解かせようとするのではなく、できそうな問題や面白そうな問題から挑戦させてみてください。できれば、お父さん(役)も一緒になって挑戦して欲しいと思います。

 

③記憶力(短期記憶、ワーキングメモリ)対策

近頃、長期記憶だけでなく短期記憶も注目され始めています。実は短期記憶が学力や読解力に非常に大きな影響を与えていることが明らかになっているからです。短期記憶とはすぐに覚えて、必要がなくなるとすぐに忘れてしまうような記憶のことです。この力が弱いと、国語の長文を読んでいるうちに質問そのものを忘れてしまったり、算数では大問と小問の関係を見逃してしまったりします。

低学年の場合
実は、まだまだ語彙が少ない小学1~2年生にクドクドと長く言葉で説明しても、ろくなことはありません。大人が頑張って言葉で説明すればするほど、子どもたちの語彙力を超えてしまって理解が追いつかなくなってしまうのです。男の子は特にこの傾向が強い様です。理解が追いつかなくなった子どもたちは、聞き逃すことを覚えてしまいます。聞いてはいるけれども頭には全く入っていない状態です。これを何回かくりかえすと話が聞けない子どもになってしまいます。
そんな時には、長々と説明することは辞めて、ポイントだけをできるだけ短い言葉、せいぜい10秒ほどの短い言葉で説明するようにします。そして、長く説明しない代わりに、説明した後すぐに「今、何と言ったかな?」と聞き返してやります。幼いうちにこれを繰り返すことで、短期記憶が身についていきます。

中学年の場合
3年生頃からは、意識的に計算のためのワーキングメモリを伸ばしてやりたいものです。小学3年生頃から二桁以上のかけ算や割り算などの筆算の練習が始まりますが、その際に計算のためのワーキングメモリが非常に重要になります。
1~9の一桁の数字の中から、違う数字を4つ選びます。この4つの数字を全部使って+-×÷の計算と( )だけを使って10にする方法を見つけさせてみてください。馴れるまでは少し難しいですが、子どもたちはすぐに馴れます。身の回りには4桁の番号が溢れているので、そんな数を見つける度に遊び感覚で練習させてみてください。半年もすれば相当の力がついているはずです。

高学年の場合
高学年にもなれば、積極的に暗算をさせてみてください。ミスを恐れるあまり、暗算には消極的な意見があることも知っています。しかし、簡単な計算(3ケタどうしの足し算や引き算、2ケタ×1ケタのかけ算など)くらいはせめて暗算できるようにはしておきたいものです。簡単な暗算ができないせいで算数や数学の説明を聞いてもわからないなどということも実際に起こりうるのです。また、ただでさえややこしい文章問題を考える際にも暗算ができなければ余計にハードルが高くなってしまいます。

いずれの対策にも家庭のサポートが重要です。非認知能力を一人で鍛えることは非常に困難なのです。塾などで教えてもらっただけでは育てることはできません。桜中学校への進学をお考えなら、塾などに通わせる前に身につけさせておきたいことがたくさんあることを忘れないで頂きたいと思います。そして多くの場合、非認知能力を高めることと受験対策の塾に通うことの両立は難しいことも知っておいて欲しいと思います。

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